この本について~内容、あらすじ、著者
(書名)
世界の一流は「雑談」で何を話しているのか
(著者)
ピョートル・フェリクス・グジバチ
(出版社)
クロスメディア・パブリッシング
(発行年度)
2023年3月
世界の一流は「雑談」で何を話しているのか~ビジネス現場での活かし方
雑談の力を戦略に変える~信頼と成果をつかむ第一歩
雑談の目的を再定義
雑談とは、一般的に「軽い会話」や「無駄話」と捉えられがちです。
しかし、ビジネスシーンにおいて雑談は単なる時間つぶしではなく、大きな目的を持つ「戦略的なコミュニケーション」の一部といえます。
雑談の目的を再定義すると、次の3つに集約されます。
信頼の構築
雑談は相手との距離を縮め、リラックスした関係を築くためのツールです。
特に初対面の場や、緊張感のある会議の前には、雑談が双方の心理的ハードルを下げ、信頼関係を築くきっかけとなります。
情報の共有と収集
雑談はただの言葉のやりとりではありません。
ビジネスにおける雑談の中には、相手の価値観やニーズを探る貴重なヒントが隠されています。
適切な質問や話題を通じて、相手の本音や隠れた課題を引き出すことができます。
相手の心を動かす準備
雑談は「心の扉を開くカギ」のようなものです。
本題に入る前に、相手の心をほぐし、前向きな状態を作り出すことで、その後の提案や交渉がスムーズに進みやすくなります。
世界の一流が考える「雑談」とは
世界のビジネスパーソンは雑談を「dialogue(対話)」として捉えています。
この対話には、単なる情報交換ではなく、深い意図と戦略が含まれています。
一流のビジネスパーソンたちは、雑談を次のように活用しています。
意図を持った会話をする
一流の雑談では「何を確認し、何を得たいのか」が明確です。
例えば、初対面の相手に対しては、相手の価値観や期待を引き出すような質問を投げかけます。
それは「相手を知りたい」という好奇心と同時に、ビジネスの成功を見据えた行動です。
相手に共感し、心をつかむ
雑談の目的の一つは、ラポール(信頼関係)を築くことです。
共感を示し、相手の話を深く聞くことで、相手の心をつかみ、強い信頼を得られます。
一流は、ただ話をするのではなく、相手の心の動きや感情を感じ取る力を鍛えています。
目的に応じた雑談を使い分ける
一流のビジネスパーソンは、雑談の目的に応じて話題を選びます。
例えば、社内ではチームの結束を高める話題を選び、商談の場では相手のビジネス課題を探るための会話を展開します。
常に状況に適した雑談を展開できるのが彼らの特徴です。
雑談を戦略に変える一歩を踏み出そう
日本人にとって、雑談は「本題に入る前の潤滑油」と考えられがちですが、一流のビジネスパーソンはそれを「武器」として活用します。
あなたも、雑談をただの会話ではなく、相手との信頼を深め、成果を得るための強力なツールとして磨き上げてみませんか?
信頼を築く雑談の極意~心理学的アプローチと実践テクニック
ラポール形成の3原則
「ラポール」とは、相手との信頼関係を築き、心理的な繋がりを作ることを指します。
雑談においてラポールを形成するためには、以下の3つの原則を意識することが重要です。
相手が「何を大切にしているか」を知る
人は、自分の価値観や大切にしているものを共有すると、安心感を抱きます。
雑談の中で、相手が何を大切にしているのかをさりげなく聞き出すことで、心の距離を縮めることができます。
例えば、「最近の休日はどう過ごされていますか?」と質問し、趣味や家族との時間を尊重する姿勢を見せることが効果的です。
相手が「何を正しいと思っているか」を知る
信念や考え方は、その人の行動や判断を左右する重要な要素です。
「最近話題になっている○○についてどう思いますか?」のように、意見を尋ねることで相手の信念に触れることができます。
このとき、相手の意見を否定せず、共感を示すことが大切です。
相手が「何を求めているか」を知る
人は誰しも、何かしらの期待や願望を抱えています。
それを理解することで、より深い信頼関係を築くことができます。
「今一番力を入れていることは何ですか?」と尋ねたり、相手の目標や課題について話を広げたりすることで、相手のニーズに応じた会話を展開できます。
相手の価値観・信念・期待を引き出す質問法
ラポール形成をさらに強固にするためには、相手の価値観や信念、期待を引き出す質問力が重要です。
以下のような質問法を活用すると効果的です。
価値観を引き出す質問
「あなたがこれまで一番達成感を感じた瞬間はいつですか?」
「仕事の中で特に楽しいと感じる瞬間は何ですか?」
このような質問を通じて、相手が大切にしているものや、行動の背景にある価値観を明らかにします。
信念を引き出す質問
「○○についてどのようにお考えですか?」
「この仕事をする上で、最も大事だと思うことは何ですか?」
信念に関する質問は、相手が持つ判断基準や行動規範を知るのに役立ちます。
期待を引き出す質問
「今後、どのような結果を期待していますか?」
「もし何でも可能なら、どんなことに挑戦したいですか?」
相手の期待や目標を引き出すことで、会話の方向性が明確になります。
心理学的アプローチで信頼を深める
これらの質問を投げかける際に重要なのは、共感を示しながら、自然な流れで会話を展開することです。
心理学でいう「無条件の肯定的関心」と「エンパシー(相手の感情に寄り添うこと)」を意識することで、相手は安心して自己開示をするようになります。
例えば、相手が「仕事で忙しい」と話した場合には、「本当にお忙しい中、頑張っていらっしゃるんですね」と相手を労う一言を添えるだけで、会話がスムーズに進みます。
実践で磨く信頼構築スキル
雑談は、一朝一夕で得意になるものではありませんが、意識して実践を積むことで確実にスキルを磨けます。
ラポール形成の3原則と質問法を意識しながら会話を楽しむことで、相手との信頼関係を深め、ビジネスでもプライベートでも成果を引き出せる力を身につけましょう。
雑談を成功させるための準備~状況確認と戦略的アプローチ
雑談の目的を明確にする4つのステップ
雑談を成功させるためには、話を始める前に明確な目的を持つことが大切です。
目的が曖昧だと、会話が断片的になり、結果的に時間を無駄にすることになりかねません。
以下の4つのステップで雑談の目的を整理しましょう。
「つながる」⇒信頼関係を築く
雑談の基本は、相手との距離を縮めることです。
初対面の場や緊張感のある状況では、相手にリラックスしてもらうことを目的に、親しみやすい話題を選びます。
たとえば、「最近、気になるニュースがありますか?」など、軽く話しやすいテーマから始めると良いでしょう。
「調べる」:情報を収集する
雑談は相手の状況やニーズを探るための重要な手段です。
相手の価値観や課題を理解するために、「最近のプロジェクトで何か新しい挑戦をしていますか?」といった質問を投げかけます。
目的を情報収集に置くことで、次の提案やアプローチの準備が整います。
「伝える」⇒自分の考えを示す
雑談を通じて自分の意図や考えを伝えることも重要です。
たとえば、「私も○○に挑戦していて、こう感じています」と自分の経験を共有することで、相手に共感を与えつつ、信頼を深めます。
雑談の中に自己開示を織り交ぜると、相手も心を開きやすくなります。
「共有する」⇒共通認識を築く
雑談の最後には、話した内容を整理し、次にどう進むかを確認します。
「なるほど、○○が課題なんですね。次にどう進めるか一緒に考えましょう」といった形で共通の理解を確認することで、雑談から得た情報を次のステップにつなげられます。
相手の情報をどう活用するか
雑談で得た情報は、単なる聞き流しで終わらせず、具体的な行動につなげることが大切です。
以下に、その情報活用のポイントを示します。
1)相手の価値観を把握してアプローチを調整する
相手が大切にしている価値観を把握することで、以降のコミュニケーションや提案内容を適切に調整できます。
たとえば、相手が「チームワーク」を重視するタイプであれば、提案内容に「協力体制」を強調する要素を加えると効果的です。
2)相手の課題やニーズを基に提案を行う
雑談で得た課題やニーズを基に、「こういった解決策が考えられるのではないでしょうか」と提案することで、相手の信頼を得られます。
相手の抱える問題に寄り添う姿勢を見せることが重要です。
関係性を深めるための次の話題を準備する
雑談中に得た情報を元に、次回の会話で活用できる話題を準備しておきましょう。
たとえば、相手が趣味としている活動や興味のある話題を覚えておき、次の雑談で触れることで、「自分に関心を持ってくれている」と感じてもらえます。
長期的な関係構築のためのデータベースを作る
得た情報を記録し、長期的な関係性を築くための資料として活用します。
たとえば、相手がどのような価値観や課題を持っているかを記録し、次回のミーティングやメールでその内容に触れることで、相手に一貫した関心を示せます。
雑談を戦略的に活用する準備を整える
雑談は「話して終わり」ではなく、次の行動や関係構築への架け橋です。
雑談の目的を明確にし、得た情報を最大限活用することで、ビジネスや人間関係の成功につなげることができます。
ぜひこれらのステップを意識して、戦略的な雑談を実践してみてください。
NG雑談を避ける~信頼を損なわないための6つのポイント
雑談は信頼関係を築く強力な手段ですが、内容やアプローチを間違えると逆効果となり、相手との関係に亀裂が生じることもあります。
ここでは、信頼を損なわないために避けるべき雑談の具体例と、文化や価値観の違いを意識した配慮について解説します。
雑談でやってはいけない具体例
1)否定的な話題を持ち出す
他人や状況に対する批判的な発言は、聞き手を不快にさせる可能性があります。
たとえば、「最近の若い世代は全然働かないですね」といった発言は、相手に同意を求めているように見えて、実は偏見を押し付けているだけです。
2)プライベートな質問を深掘りする
相手の家族状況や収入、健康に関する過度にプライベートな質問は避けましょう。
「最近お子さんはどうですか?」と軽く聞く程度は問題ありませんが、「どこの学校に行っているのですか?」「学費はどうされていますか?」と掘り下げると、相手にプレッシャーを与える可能性があります。
3)一方的な自慢話をする
自分の成功体験や過去の実績を延々と話し続けるのは、相手に退屈感を与えるだけでなく、「自己中心的」と思われるリスクがあります。
雑談は「共有の場」であり、一方的な自己アピールの場ではありません。
4)宗教や政治に関する話題
これらの話題は、相手の価値観や立場によって大きな溝を生む可能性があります。
たとえば、「最近の選挙で○○党が勝つとは思いませんでしたね」というような発言は、相手を知らない段階では控えるべきです。
5)デリケートな話題に触れる
相手の外見や年齢、体型に関する話題は慎むべきです。
「最近、少し太りました?」といった無邪気な発言も、相手には失礼と感じられることがあります。
6)聞き手を置き去りにする専門用語や業界用語の多用
業界特有の専門用語を多用しすぎると、相手が会話についていけなくなります。
「先日のROIの数値が…」といった話を雑談で持ち出すのは、相手の知識レベルを確認してからにしましょう。
文化や価値観の違いを意識した配慮
1)相手の文化背景を尊重する
海外のビジネスパーソンと雑談する際、相手の文化や価値観を事前にリサーチしておきましょう。
たとえば、日本ではお酒を勧める行為が一般的ですが、宗教的な理由で飲酒をしない人も多くいます。
「一杯どうですか?」と軽く誘う前に、相手の文化を考慮しましょう。
2)価値観の違いを前提とした会話をする
相手が何を大切にしているかを知らない段階では、偏見に基づく話題を避けることが大切です。
たとえば、「日本の仕事文化が一番効率的ですよね」と断言するのではなく、「日本ではこんな風に働いていますが、そちらではどうですか?」と質問形式にすることで、価値観の違いを尊重する姿勢を示せます。
3)多様性を受け入れる態度を持つ
雑談中に相手の価値観や意見が自分と異なる場合でも、それを否定せず受け入れる姿勢が重要です。
「なるほど、そういう考え方もありますね」と言うだけで、相手は自分の意見を尊重されていると感じます。
4)言葉の選び方に気を付ける
表現の仕方一つで、相手の印象が大きく変わります。
たとえば、「○○さんの国ではこんなことが普通ですよね?」と決めつけるのではなく、「○○さんのご経験では、こういうことはどう感じられますか?」と尋ねると、配慮が伝わります。
5)聞き手の立場に立った話題を選ぶ
相手がどのような環境や価値観を持っているかを理解した上で、その人にとって有益で興味深い話題を選ぶことが重要です。
たとえば、相手が環境問題に関心を持っているなら、「最近のSDGsに関連するプロジェクトでどんな活動をされていますか?」と問いかけてみましょう。
6)ニュートラルな話題を心がける
天気や趣味、最近のニュースなど、誰にとっても無難な話題を選ぶことが、最初の雑談では特に重要です。
深い話題に入るのは、相手との信頼関係が築けてからが望ましいです。
雑談のNGを避けて信頼を構築する
雑談は、相手を知り、自分を知ってもらう大切な時間です。
ここで紹介したポイントを意識しながら会話を進めることで、信頼を損なわず、むしろ関係を深める効果的な雑談ができるようになります。
心に余裕を持って、相手を思いやる雑談を実践してみてください。
雑談を武器に変える~ビジネスの場での具体的応用例
雑談は、ビジネスシーンで単なる潤滑油ではなく、信頼を構築し、成果を生むための強力なツールです。
ここでは、商談前や社内での雑談を効果的に活用する具体的な方法をご紹介します。
商談前の雑談で信頼を勝ち取る方法
商談の場では、最初の数分間の雑談が、その後の交渉や提案の成否を大きく左右します。
適切な雑談を活用することで、相手との距離を縮め、信頼を得ることができます。
1)リサーチを活用したパーソナライズされた話題を選ぶ
商談前に相手の背景や興味をリサーチしておくと、より効果的な雑談が可能です。
たとえば、相手が趣味でゴルフを楽しんでいると知っている場合、「最近、どこかゴルフに行かれましたか?」といった話題を振ることで、相手の興味を引きつけられます。
2)相手をリラックスさせるための共感の一言
初対面の緊張感を和らげるには、共感を示す一言が有効です。
「この会場、とても落ち着きますね」といった軽いコメントや、「移動はスムーズでしたか?」と気遣う発言で、自然な会話の流れを作ります。
3)ポジティブで中立的な話題を選ぶ
最初の雑談では、天気、最近のニュース、季節のイベントなど、ポジティブで中立的な話題を選びます。
「今年の桜は特にきれいでしたね」といった軽いトピックは、相手の心を開きやすくします。
4)聞き手に徹し、相手に話させる
商談前の雑談では、相手に話してもらうことが重要です。
「どんなご趣味がありますか?」や「最近注目している話題はありますか?」といった質問で相手に話題を提供し、しっかり聞く姿勢を見せましょう。
5)商談に関係のある「布石」を置く
雑談の中で商談につながる話題をさりげなく取り入れることで、自然に本題へ移行できます。
たとえば、「最近、○○業界ではこういった動きがあると聞きましたが、どうお感じですか?」と相手の意見を求めるのも効果的です。
チームの結束を高める社内雑談術
職場での雑談は、単なるコミュニケーションではなく、チームの結束力を高め、生産性を向上させる重要な役割を果たします。
以下は、社内雑談を効果的に活用する方法です。
1)雑談の場を自然に作る
定期的なランチミーティングやコーヒーブレイクを活用して、雑談の機会を意識的に作ります。
雑談は仕事の合間にリラックスした場で行うのが理想的です。
2)ポジティブな雰囲気を重視
社内雑談では、ネガティブな話題を避け、ポジティブな内容を意識することが大切です。
例えば、「週末に面白い映画を観ました!」といった話題を提供することで、チーム全体の雰囲気を明るく保てます。
3)共通点を見つける
チームメンバーとの共通点を探ることで、信頼関係が深まります。
「子どもの学校の行事で大変です」といった共感できる話題は、プライベートな側面を共有しやすくなります。
4)仕事以外の話題にも触れる
仕事の話ばかりではなく、趣味や休日の過ごし方など、仕事以外の話題を取り入れることで、メンバー同士の絆が強くなります。
「この間おすすめのカフェに行きましたが、とてもよかったですよ!」といった軽い話題を振るのも効果的です。
5)雑談を仕事につなげる
雑談を通じて得た情報を、仕事に活かせるようにします。
例えば、雑談の中で「最近忙しくて困っています」と聞いたら、業務分担の調整を提案するなど、フォローアップの行動を取ると信頼が高まります。
6)新しいアイデアを引き出す
雑談の場を活用して、メンバーから新しいアイデアや意見を引き出します。
「最近、仕事で気になっていることや改善したいことはありますか?」といった質問を雑談の中に織り交ぜることで、建設的な意見が集まりやすくなります。
雑談を武器に変える実践のすすめ
商談前の雑談や社内での雑談を意識的に活用することで、信頼関係の構築やチームの結束力向上を実現できます。
雑談の力を最大限に活かすことで、ビジネスの場での成功につなげましょう。